主訴「脱毛」のポメラニアンちゃんのお話
先日見た症例のお話です
※症例については個人特定防止のためフェイクを入れています
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ポメラニアン 去勢雄 5歳
●主訴●
尾根部から始まり数ヶ月かけて背部にまで拡大した脱毛
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患者さんのポメちゃんは主訴通り、尻尾から背部にかけて大きく脱毛していました
痒みはないとのことでした
この主訴を受け、国家試験の記憶がまだ強く残っていた私は…
全身対称性の脱毛❗️副腎皮質機能亢進症か甲状腺機能低下症❓
と考えたわけです
副腎皮質機能亢進症のその他の症状としては
・多飲多尿
甲状腺機能低下症のその他の症状としては
・運動不耐性
・倦怠感
などが挙げられます。
詳しい病態についてはまた今度…
鑑別診断をするため問診を続けます⬇️
👩⚕️「元気食欲はありますか?」
「あります」
じゃあ甲状腺機能低下症は除外して良いのかな…
👩⚕️「飲水量が増えてきたと思うことはありますか?」
「うーん、特にそういったことはないです」
……飲水量は正常。クッシングでも初期なのか?でも脱毛は全身に広がっているし…
まだ甲状腺機能低下症の可能性も除外しないでおこう
ホルモン系の血液検査をするべきかな?痒みはないそうだけれど念のため皮膚検査するかな?
その後の身体検査によりついた診断は…
脱毛症X
またの名を毛周期停止
じゅ、授業で見たことあるーーーー‼️
簡単にまとめます⬇️
脱毛症X
・病態
日本での好発犬種はポメラニアン、トイ・プードル、チワワ、パピヨンなど
毛周期が休止期で停止してしまう
全身状態に明らかな異常を伴わずに広範囲な毛周期異常が生じる
原因や病態は十分に解明されていない
・治療
避妊去勢で改善する場合がある
治療薬としてメラトニンを用い、毛周期の促進を促す
治療効果は3ヶ月後に評価することが望ましく、3ヶ月治療を継続しても
発毛が見られない場合は他の治療法を検討する
脱毛症Xはあくまで見た目の問題であるため、
飼い主さんの意向によっては
何もせず放置することも多いそうです
今回の飼い主さんはお薬を試してみたいとのことでしたので、
メラトニンを体重量処方し2〜3ヶ月後再診という流れになりました
ちなみに今回の症例では、検査という検査はほぼしていません
院長の身体検査により診断名をつけています
もちろん、心配だからしっかり検査してほしい‼️という飼い主さんであれば
一般的な血液生化学検査とホルモン検査をした後に
鑑別診断であるホルモン性の疾患を除外するべきですが、
何しろ検査にはお金がかかります💰💰
そういったことに対する考慮はとても大切で、
今回の飼い主さんは、検査するのはまた何か気になった時で良い
とのことでしたので結局検査はしませんでした
そしてこの脱毛症X、ポメラニアンの子で本当に多く、
4月から5月で既に4頭診ています
ふわっふわだった子がトリミング後に毛が生えなくなってしまった
なんてケースもあり、もっと病態が解明され良薬が販売されることを願うばかりです
あと1ヶ月後くらいに本症例のポメちゃんが再診に来る予定です
少しでも元のふわふわな姿に戻れていたら良いなという気持ちです
余談ですが私の実家にもポメがいます
ポメは可愛いのです🙏✨